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Cinema de 温故知新

“不自由さ”を愉しめる無声映画。12月は原節子出演作を放送

 これまでも幾度か白状してきたことだが、衛星劇場で個人的に一番楽しみにしているのが《大林宣彦のいつか見た映画館〜サイレント映画の愉しみ〜》である。毎月邦洋1本ずつ無声映画を放送し、その前後に大林監督の解説が入る趣向のこの番組、古今東西の映画に等しく愛情を注ぎ込む映画作家ならではの名謳いによって、色や音があろうがなかろうが、いや、むしろないというある種の不自由さによって、見る側は想像の翼を拡げて見ることができるのではないか? という映画本来の愉しみ方が毎回心地よく提示されているのだ。

 いつだったか大林監督は、昭和の映画評論家の文章には誤りが多いが、それは今みたいにVTRで見直すことができず、記憶で書いていたからであり、しかしそれゆえに当時の映評には名文が多く、むしろその映画を見たくなるのだとおっしゃっていたことがある。

 そう、映画とは記録ではなく記憶するものであり、当番組にしても現在残されている貴重なフィルムをオンエアしているわけだが、大林監督は視聴者に向ってそれらを記録ではなく、それぞれ脳裏に記憶し、自分だけの映画を作りあげてほしいと願いつつ、解説されている節もあるのだ。

 自主映画活動を経てCMディレクターとなり、『HOUSE』(77)で商業映画デビューを果たして以降も、大林監督は「自分はジャーナリストとして社会と向き合い、映画を作り続けています」と唱え続け、その実践として、特に最近は既成の映画文法の枠に囚われない自由な発想で、現代社会に警鐘を鳴らす意欲作を発表し続けている。

 12月には最新作『花筐』が公開されるが、これも昨今キナ臭さも尋常ではなくなってきている中、反戦平和を映画というメディアを最大限に駆使して訴えていく作品で、本来『HOUSE』(こちらもホラー映画の枠を借りて、実は戦争批判を巧みに訴えている)の前に撮る予定でいたものであった。

 実は『花筐』撮影に入るとき、大林監督は自ら肺癌であることをスタッフ&キャストの前で公表し、そのまま撮影を敢行。これを遺作とする覚悟で完成させた。そして現在は劇的に病状が改善して「余命は未定」とし、さらなる次回作の意欲に燃えてらっしゃる!

 正直ここ1年ばかり番組を見るにつけ、ちょっとやつれてらっしゃるような気がして、撮影疲れかな? などと思ったりもしていたのだが、

『生命の冠』

それが実情だったわけだ。しかし、それでも監督は俄然元気に番組を続けてくださっているのが、何よりも嬉しい。

 12月は内田吐夢監督、原節子&岡譲二主演『生命の冠』(36)と、戦争映画の名作『ボー・ジェスト』(27)を放送。前者は北海道・樺太を舞台に、実直に規則を守り続けるがゆえに、蟹の缶詰工場が苦境に陥っていく経営者の物語で、内田監督は社会批判を訴える傾向映画を戦前に多数撮っているが、本作もその一本としてドキュメンタリー・タッチが貫かれている。

 撮影当時15歳だった原節子は主人公の妹役で登場するが、デビューして間もない少女期の愛らしさが際立っている。また本作は今なおロシアに占領されたままの北方領土・国後島でロケを敢行した作品でもあり、地元エキストラを多数動員し、流氷の中の蟹漁をはじめ、当時の島の生活などを収めた貴重なフィルム足り得ているのだが、これを前作『野のなななのか』(14)で北方領土の悲劇を描き訴えた大林監督がどのように解説してくれるのか、今から楽しみでならない。

 《いつか見た映画館》も、新作映画『花筐』も、そして次回作も、大林宣彦監督のこれからの活躍に、ますます要注目! なのである。 これを機に、特に彼の“怒劇”を思う存分堪能させてもらいたい(そして、これら以外の作品も近々ぜひに!)