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歌舞伎彩歌

「『すっぱ』の盗みを見破れるか?」

「太刀盗人」


海外旅行最後の日、「さて、もう一度おみやげを見てこようか」と空港でウロウロ。両手に荷物をたくさん持ちながら、あっちのお店こっちのお店と珍しい品物に目移りしているうちに、気がついたらハンドバックが開いていて、お財布を抜き取られた!……なんていう苦い経験、ありませんか?


「太刀盗人」は、田舎から京の都に上ってきた万兵衛(中村錦之助)が、国に戻る前にとおみやげを買いに行くシーンから始まります。新市の賑わいは、現在の東京でいえば竹下通りかアメ横といったところでしょうか。京みやげを選ぶ万兵衛の背後に、「すっぱ」の九郎兵衛(中村又五郎)が忍び寄ります。


「すっぱ」とはスリのこと。忍者のことも「すっぱ(素っ破・透破・水破)」と言いますが、いずれも動作が素早いのが特徴ですね。目にも留まらぬ様子を「すっぱ」というのかもしれません。人を出し抜くことを指す「すっぱ抜く」も、この「すっぱ」から来ているとか。


さて「すっぱ」の九郎兵衛、万兵衛の腰に金目の太刀をみつけ、シメシメと盗み取ろうとしますが、それに気づいた万兵衛とひと悶着。騒ぎを聞きつけて、通りがかりの目代もくだい丁字左衛門ちょうじ さえもん(坂東彌十郎)が仲裁に入ります。目代とは国司の代理人、つまり代官のような偉い人ですから、これで万兵衛も一安心。
……と思いきや、九郎兵衛、なかなか罪を認めません。自分の太刀だと言い張るため、左衛門はどちらのものか確かめようと2人に太刀の由来を尋ねますが、九郎兵衛、ずる賢い! 先に万兵衛に答えさせ、それを聞いて自分も同じように答えるという手に出ます。これでは一向に埒があきません。目代の左衛門、騙されないでちゃんと真相を突き止められるのでしょうか?


この作品は狂言「長光」が原作です。長光は盗まれそうになった刀の名前ですね。歌舞伎では能や狂言を原作にしたものを「松羽目物まつばめもの」といいます。背景は大きな松が描かれた鏡板1枚のシンプルさ。作り込んだ大道具や背景の書割はありません。又五郎や錦之助の舞踊の技や、笑いを生み出す絶妙な間合いを味わいながら、スリの出そうな雑踏や、市場の活気ある賑わいを想像力してみてください。「繰り返し」の面白さはお笑い芸人のコントと同じ。肩の凝らないコメディ作品として楽しめます。