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歌舞伎彩歌

「『御存 鈴ヶ森』観客を沸かせる役者の器量」

「御存 鈴ヶ森」


――刑場があることで知られる鈴ヶ森。漆黒の闇の中、白塗りの美少年・白井権八は、駕籠かきに「江戸市中まで」と頼んだはずだったが、強盗まがいの雲助たちがたむろするここで降ろされ囲まれてしまう。が、権八は妖しい殺気で彼らを次々と斬り倒していく。立ち去ろうとしたそのとき、
「お若えの、お待ちなせえやし」と背後から声。離れた駕籠から顔を見せたのは、江戸で随一と言われる親分・花川戸の幡随院長兵衛ばんずいいんちょうべえだった。
「待てとお止めなされしは、拙者のことでござるかな?」
まだ人を斬った高揚が体の内に残るのを抑えつつ、用心深く間合いをはかる権八。すると長兵衛、
「通りかかった鈴ヶ森、お若えお方のお手の内、あまり見事と感心いたし、思わず見惚れておりやした。お気遣いはござりません。まあ、お刀をお納めなせえまし」と言って、 権八が雲助たちを殺した経緯から江戸に来たいきさつまでを聞き、江戸にいる間は私が面倒をみましょうと受け合うのだった――。


筋と言えば、これだけのお話です。白塗り・前髪の美しい若衆・白井権八の色気と殺気、恰幅のよい花川戸の親分・『幡随院長兵衛の男気と懐の深さ。そのコントラストがすべてです。暗闇の中、斬られる雲助をコミカルに見せる場面もありますが、二人の対決こそが絵になる様式美に溢れた一幕といえましょう。それだけに、役者の華と力量が問われる舞台でもあります。


今回の権八は中村隼人。2012年中村吉右衛門と中村勘三郎の長兵衛/権八の舞台に魅了され、いつか権八をやりたいと思ったといいます。素顔も美形の隼人が白塗りで挑む権八には若さゆえの熱と勢いがあり、初役とはいえ華を感じさせます。 長兵衛は中村錦之助。隼人とは親子共演で、「いつか長兵衛をやるだろう隼人の手本になれるよう」と構えの大きい長兵衛を演じました。
「名優がこの芝居をやって、その演技っぷりが評判をとって人気演目になり、誰もが知るほどになったから“御存”になったんですよ」と錦之助。それが証拠には、劇中「噂の高い正真正銘の長兵衛というは、鼻の高い幡随院長兵衛、又その次は目玉の大きい…」と、長兵衛を当たり役とした名優たちの特徴を挙げつつ讃える入れ事(アドリブ)が、そのままセリフとして残っているくらい。名優がやる、名優にあやかる、それを楽しむ。『鈴ヶ森』の極意です。