衛星劇場 あなたのテレビライフを豊かにする。邦画・洋画・韓流・歌舞伎などバラエティに富んだ上質エンターテインメントチャンネル

邦画・洋画・韓流・歌舞伎などバラエティに富んだ上質エンターテインメントチャンネル

機能リンク
  • 加入申し込み
  • 会員登録
  • 番組表

歌舞伎彩歌

激しく美しく!さく裂する歌舞伎役者の身体能力「<シネマ歌舞伎>「歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉」」

<シネマ歌舞伎>「歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉」


歌舞伎を愛してやまない劇団☆新感線の主宰者いのうえひでのりは2002年、市川染五郎を主役に迎え、いのうえ歌舞伎「アテルイ」をつくりました。2015年、同じく染五郎主演、今度はキャスト全員を歌舞伎俳優にして歌舞伎NEXT「阿弖流為」が誕生。大和朝廷側で蝦夷征圧の命を受けた坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ・中村勘九郎)と、蝦夷の勇者で「北の狼」の名が轟く阿弖流為(あてるい・市川染五郎)。好敵手として競い合い、リスペクトしあう阿弖流為と田村麻呂の関係は、歌舞伎役者としての染五郎・勘九郎のライバル心とシンクロし、両花道で渡り台詞をかます二人は、掛け値なしにまぶしいほどにカッコいい! 脂の乗り切った壮年の二人がフルアウトで演じ切れる今だからこそ実現した奇跡の空間が、シネマ歌舞伎として映像に残ったのは素晴らしいことです。


ハードな殺陣で有名ないのうえ歌舞伎にあって、要求以上の美しさと鋭さをもって応える歌舞伎俳優の圧倒的な身体能力には心から拍手。スピード感あふれる殺陣の中に、歌舞伎らしいゆっくりとした動作を入れ込む演出は、歌舞伎の立ち廻りの成り立ちとそこにみなぎるエネルギーを実感させてくれます。


女形も、それぞれが持ち味を如何なく発揮。御霊御前役の市村萬次郎は、一人マイクを使わず地声で通したといいます。萬次郎の、あっと驚く妖艶なメイクにも注目。また中村七之助は劇団☆新感線では2人の女優が演じていた謎の剣士・立烏帽子と鈴鹿の二役を1人で演じていますが、とりわけ声での演じ分けが素晴らしく、彼らの運命をにぎる蝦夷の神・アラハバキが乗り移るところは、化粧も衣装も同じなのに人格が変わったことがはっきりわかるほどです。


雄々しく潔い武者二人の友情と、哀しい結末。荒ぶる神アラハバキの領域を侵し、一度は蝦夷を追放された阿弖流為と、その蝦夷を平らげようとする大和朝廷との戦いは、『もののけ姫』にも通じる大いなる自然への畏怖が感じられます。一方、劇団☆新感線の真骨頂であるギャグも健在。“熊子”という熊の着ぐるみが出てきたときは、ただの色ものかと思いきや、最後は“熊子”で大いに泣かされる。笑いと涙と人間社会に対する鋭いまなざし。随所に中島かずきの巧みな脚本が光る名作です。