Special Interview 毎熊克哉

芝居噺弐席目『後家安とその妹』

毎熊克哉

後家安は悪人だけどどこか人間らしい…
役者同士の殺気が伝染する瞬間がたくさんあった作品です

毎熊克哉

豊原功補が企画・脚本・演出を手掛けた舞台「御家安とその妹」。豊原による芝居噺の弐席目で、昨年5月に紀伊國屋ホールで上演された。三遊亭圓朝の落語を原案にした同作で、主人公・御家安こと安三郎を演じるのは、ここ数年出演作が途切れない毎熊克哉。御家人を追われ放蕩生活を送る後家安を、軽快に時に切なく…大きな存在感で演じている。

熊さんにとっては約5年ぶりの舞台となりました。殺陣あり歌ありと見どころ満載の作品となりましたが、最初にお話を聞いた時の感想は?

「やはりブランクがありましたし、紀伊國屋ホールみたいな劇場でやらせていただくのも初めてで、最初はそこに立つ自信がありませんでした。さらに時代物で、これまで落語や江戸弁にあまり馴染みがなかったので、“難しそうだな~。大丈夫かな”というのが正直なところ。でもお声かけいただいているわけですし、一晩考えて、“これはもう、挑戦するしか選択肢はないだろう!”と奮い立ちました」

妹のお藤(芋生悠)は殿様の妾として子どもを産み、兄・後家安は御家人を追われ、博打に酒に借金と、破天荒な放蕩生活を送っています。毎熊さんは、そんな後家安をどう捉えて演じていましたか?

「やっていることは全部悪ですし、良いことは何ひとつやっていないんですけど、最初、“なんだこの男、可愛いな”と思いました。彼にとっての悪は生きるための術であり、そこに“悪いことをしてやろう”という魂胆はまるでない。生きるための悪が子どもの頃から染みついてるので、悪と思っていないのかもしれない。悪人なんですけど、どこか人間らしいところがある可愛い男と思いながら演じていました。後家安の怖くて尖っているところと柔らかいところの塩梅が一番の肝。そこのバランスが難しくて、豊原さんとは幕が開いた後もずっと話し合いました。ラスト、妹・お藤とのシーンで、後家安が初めて素直になるんですね。そこはとてもいいシーンになったと思いますので、ぜひ注目していただきたいです」

演出家としての豊原さんの印象はいかがでしたか?

「江戸弁や所作、僕の中ではいろんな壁があって大変でしたが、豊原さんから“もっとこうしたらどう?”と具体的なアドバイスをたくさんいただきました。やはり豊原さんご自身が役者さんなので、その過程が自分の中ではとてもスムーズに流れていって、“ああそういうことか”と素直に聞けましたし、ついていくことができました。豊原さんの中でしっかりしたビジョンがあったので、不安になることもなかったですね。ありがたかったです」

現在連続ドラマにも出演されていますし、ここ数年は出演作が途切れません。毎熊さんの役者としての今後の目標は?

「目標…これといってないと言ったらアレなんですけど(笑)、今作にしても、毎回“これ出来るかな?”と不安を抱きながら挑戦してみると、乗り越えた時にはちょっとずつ何かが出来るようになっているんですよね。そういう過程を繰り返していくことで、良い表現が出来るようになるのかなと。ですから今は、ただひたすらそれを続けることが目標と言えるかもしれません」

最後に読者の皆さんへ、メッセージをお願いします!

「稽古を合わせて2ヵ月いかないくらいの時間でしたが、濃すぎてあまり覚えてないほど、賭けて臨んだ作品です。登場人物が多くないのでそれぞれがものすごく集中していて、稽古中、“仲良くやろうぜ!”みたいなことがあまりなかったような気もしますが、そういう役者1人1人の殺気が伝染する瞬間がいっぱいありました。舞台でしか味わえない作品だと思いますので、皆さんぜひご覧ください」

Katsuya Maiguma

1987年3月28日生まれ。広島県出身。2016年公開W主演映画「ケンとカズ」で第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞ほか各賞を受賞。近年の主な出演作に、映画「いざなぎ暮れた。」、「止められるか、俺たちを」、「ご主人様と呼ばせてください」、ドラマ作品では「恋はつづくよどこまでも」、「少年寅次郎」、連続テレビ小説「まんぷく」など。現在ドラマ「妖怪シェアハウス」に出演中。

  • 芝居噺弐席目『後家安とその妹』

    『名人長二』に続く芝居噺シリーズ第2弾。三遊亭圓朝と古今亭志ん生の落語を原案に、今作も俳優豊原功補が企画、脚本、演出を手掛ける。御家人を追われた恨みを腹に持つ年若い兄妹に翻弄される人々の運命を描き出す。

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