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Special Interview 木村達成 簡単なお話のようで奥が深い。いろんな見え方のする物語を楽しんでください。

木村達成

『銀河鉄道の夜』という作品は、たとえしっかりと読んだことがなくても多くの人が概要は知っている、いわば国民的な童話です。木村さんは今回、舞台という形でこの作品と向き合ってみて、どのような魅力を感じましたか?


「簡単な物語のようで、実はすごく奥が深いですよね。僕らも稽古場で作品の裏側に込められたメッセージを解読するのに長い時間をかけました。何度も読み砕き、納得しながら1ページずつ作り上げていく感じで。けっして突拍子もないことが描かれているわけではないんです。でも、ときには“自分自身をもう一度しっかり見直してごらん”といったことがメッセージとして詰まっていたり、別のエピソードでは“いろんなところに幸せは転がっているんだよ”ということを教えてくれる。だからこそ、丁寧に形にしていくことが大事だと感じましたね」


宮沢賢治の作品は読み手や受け手によっていろんな見え方ができるのも面白さのひとつですよね。


「本当にそうですね。僕も稽古前と公演後では大きく印象が変わりました。当初はどうしてこの物語が“童話”というジャンルで扱われているのかが正直、よく分からなかったんです。でも、稽古を重ねていくうちに、少年が“死”に向き合う心を持つことの大切さや、他人を許す感情など、子供たちにとって必要なメッセージがたくさん詰め込まれていることに気づいて。僕自身、小さい頃から家で飼っていた動物たちと触れ合うことで、命の重さを実感してきたところがあるので、そうした道徳的な思いもこの作品で描かれているんだなと感じました」


ジョバンニは静かな青年でありながら、うちに秘めたものは計り知れない……そんな空気感を漂わせていました。


「登場シーンから彼はすっきりした感じではないですよね(笑)。普段、僕はあまり自分の出演作の映像を見直すことはしないのですが、この作品に限っては、“どんな顔で舞台に出てきていたんだろう?”と気になって見させてもらったんです。そうしたら目がものすごく虚ろで。“あぁ、よかった”と安心しました(笑)。今にも自死してしまいそうな危うさや儚さが感じられて、まさにイメージしていたジョバンニだなって」


カムパネルラ役の佐藤寛太さんとはこの作品が初共演でした。


「稽古場で初めて会った時の印象では、“コイツとは絶対に仲良くなれないな……”と思っていたのに、気づいたら一番仲良くなってましたね(笑)。彼は暴れん坊というか、愛すべきバカというか……(笑)。実は稽古前から白井さんの現場はとても厳しいという噂を聞いていたのですが、彼がいいムードメーカーになってくれたおかげで、稽古場はいつも明るくて。白井さんも、僕らのことを子どもをあやすパパのように接してくださってましたね(笑)」


(笑)。カムパネルラはジョバンニにとって級友であり、ともに旅をする大切な仲間です。彼の存在はジョバンニに大きな影響を与えますが、舞台上で2人が絡むことは意外と少ないですよね。


「実はそうなんです。でも少ないからこそ、2人のシーンはお客さんの心の中に、強い印象を残していかないといけなくて。僕らが普段から仲良くないと、その空気感は生みだせないので、その意味でも息のあう彼がカムパネルラで良かったです。また、僕は彼のがむしゃらな演技が大好きなんです。ヘンに上手く演じようとせず、本気で役を生きようとする。この作品において、僕はそうした真っ直ぐさが何よりも大事だと感じていたので、共演していてすごくいい刺激にもなりました」


この『銀河鉄道の夜』に続いて福田雄一さん演出の『プロデューサーズ』に出演され、2021年4月からは『魔界転生』の再演もあり、木村さんは次々に大作に臨まれています。今後の展望として、目指す役者像などはありますか?


「……う〜ん、あまりないですね(笑)。僕はいつもビジョンのようなものは持たず、なるようになるだろうという考えなんです。大事にしているのは何かを見つける嗅覚と眼だけ。そこには自信を持っているので、お声をかけていただければ、自分を信じていろんな作品に挑んでいきたいと思っています。それに僕はいま、たくさんの“演劇スタンプ”を押している時期だと思っていて。作品ごとに爪痕を残すのではなく、“俺はこの作品も経験してきたんだ”という証のようなスタンプを多く押していきたいんです。だからこそ、ジャンルを問わず挑戦し、素敵な作品に出合っていきたい。もちろん、この『銀河鉄道の夜』も僕にとっては忘れられない一作になりました。きっと、初心に戻りたいと思った時には必ず見返す舞台。そんな大切な作品に出合えて、本当に幸せだなと思いますね」



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