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Cinema de 温故知新

没後20年を迎えて―― 名優・渥美清の主演作を振り返る

今年は『男はつらいよ』シリーズの車寅次郎役で映画ファンなら知らぬ者はない名優・渥美清(1928年3月10日〜1996年8月4日)の没後20年にあたる。

 これに合わせて衛星劇場では8月、「没後20年 渥美清主演作品特集」と題して『あいつばかりが何故もてる』、『拝啓天皇陛下様』、『つむじ風』、『白昼堂々』の4本をオンエア。また同月は『男はつらいよ 寅次郎の青春』、『同 寅次郎の縁談』も放送する。

 渥美清といえば、やはり寅さんのイメージを持たれる方が圧倒的多数ではあろうが、実際はその役にたどり着くまでに彼はさまざまな人生遍歴を経てきている。若い頃は、まさに寅さんと同じように不良少年で喧嘩に明け暮れて、テキヤとのつきあいもあったそうだ。

 演技に目覚めたのは戦後の46年からで、51年以降はコメディアンとして浅草軽演劇の黄金時代の一翼を担うようになるが、54年に肺結核を患い右の肺を切除。以降はドタバタものも含めてアクティヴな演技ができなくなり、酒も煙草もコーヒーも止め、健康に細心の注意を払わざるをえなくなっていく。

 59年よりテレビ出演を開始し、61年のバラエティショー『夢であいましょう』や62年のフジテレビのドラマ『大番』で人気を得、映画でも『あいつばかりがなぜもてる』で初主演を果たした彼は翌63年、野村芳太郎監督の『拝啓天皇陛下様』で連日の体罰も何のその、軍隊は三度の飯が食える天国であるとする前科者を好演しているが、この年の彼は東宝の松林宗惠監督『太平洋の翼』で戦艦大和が好きで好きでたまらないパイロットを演じ、また東映では沢島忠監督の『おかしな奴』で戦後の人気落語家・三遊亭歌笑を熱演するという、映画人生の中でも輝かしい年になり得ていた。

 一方で65年の羽仁進監督『ブワナ・トシの歌』ではアフリカ各地を長期ロケし、これがきっかけで以降もプライベートでアフリカを訪れることになるが、これも後の寅さんの一人旅と重ね合わせることが可能かもしれない。

拝啓天皇陛下様

実は松竹以前に東映が渥美清を売り出そうとして『喜劇急行列車』(67)などの喜劇列車シリーズを連打しているが、思ったほどの成果は上がらず、むしろ66年『沓掛時次郎 遊侠一匹』での向こう見ずなチンピラ身延の朝吉役が映画ファンには名演として知られるところではある。

 68年フジテレビのテレビドラマからスタートし、映画へと転化されていった『男はつらいよ』だが、70年代は寅さんのイメージが固定化されることを嫌って積極的に他の映画やドラマに出演し、その中には名探偵金田一耕助役で異彩を放った野村監督の大ヒット作『八つ墓村』(77)も含まれるが、誠に残念だったのは今村昌平監督の『復讐するは我にあり』(79)の主役オファーを、さすがに寅さんをやっている手前、殺人鬼の役は無理だと断っていることで、もしこれが成し得ていたら、彼の役者人生は大きく塗り替えられていたことだろう。

 80年代以降は山田洋次監督作品以外の出演を控え、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(95)を遺作に、寅さんのイメージをかたくなに守りながらこの世を去っていった渥美清。その潔い姿勢に敬服しながらも、もっと他の魅力的な役柄も見てみたかったというのも偽らざるところではある。

 ところで、個人的には今も続く2時間ドラマのルーツ「土曜ワイド劇場」の第1弾『時間よ止まれ』(77)に始まる田舎刑事シリーズを今一度見直してみたいものだが、いかがですか衛星劇場さん?