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歌舞伎彩歌

『一條大蔵譚』清盛を欺いた男〜阿呆のふりをしてでも生き抜くぞ!

一條大蔵譚 「一條大蔵譚」は、平清盛から愛妾・常盤御前(ときわごぜん)を下げ渡され夫となった一條大蔵卿長成(ながなり)の物語です。「阿呆」と評判の長成は、他人の愛人を押しつけられて憤るでもなく、好きな能・狂言の見物にうつつを抜かす毎日。

 

最初の見どころは、その長成の「阿呆」ぶりです。役者によってさまざまに「阿呆」が演じられますが、今回の片岡仁左衛門は、上方歌舞伎出身の俳優らしい「柔らかさ」を醸し出す、上品で“癒し系”の長成。思わず顔がほころんでしまいます。

 

次の見どころは、常盤御前のくどき(切々と思いを語る場面)でしょう。長成の屋敷に潜入した義朝の家来・鬼次郎とその妻・お京は、楊弓遊びに興じる常盤を見て激怒。「大事の義朝様の御情けを打ち忘れ、二度三度の嫁入りなさるそのお心では、人の報いは遠からぬ」となじります。かつて源氏の棟梁・義朝の側室だった常盤は、義朝が清盛に敗れたとき、まだ乳飲み子の義経ら3人の息子たちを抱え、勝者清盛に降って愛妾となり、その後長成に嫁がされました。モノ扱いで身をもてあそばれる女性の苦しみ・悲しみを「錦の褥(しとね)も我が為には、毒蛇の鱗(うろこ)に臥す心地」と吐露する常盤を演じるのは中村時蔵。涙を誘います。

 

かたや長成の阿呆も実は仮の姿! わざと阿呆の振りをして無害な男に見せ、源氏の出身でありながら平家全盛の時代をサバイバルしていたのでした。鬼次郎やお京、常盤の前で真の姿に“ぶっ返り”、20年もの間阿呆の仮面の下に隠していた思いを爆発させる場面は、見ごたえたっぷり。「つくり阿呆」でギャグ満載の前半とのコントラストが冴えます。

「鼻の下の長成と、笑わば笑え言わば言え、命(いのち)長成、気も長成」


源氏の再興を見るまでは死んでたまるか、という悲壮な覚悟で、彼は再び「つくり阿呆」に戻ります。でも前とは違う。これからは家の中では常盤御前と二人、心を分かち合える。そこに救いがあるから、この作品は人気の演目なのかもしれません。