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深煎り時間(タイム)

こだわり派のあなたに観てほしい逸品を、その道のベテランがご提案する連載コラム。
深煎りした珈琲のように、名作の深い味わいをご堪能ください。
今月の書き手:増當竜也
1970年代の松竹アイドル映画は若者向け大船調の具現化だった!
Vol.9(12月25日更新)
「ひとつぶの涙」「虹をわたって」
「ひとつぶの涙」
監督:市村泰一 脚本:石森史郎
出演:森田健作 吉沢京子ほか

「虹をわたって」
監督:前田陽一 脚本:田波靖男 馬嶋満
出演:天地真理 沢田研二ほか

衛星劇場にて、1月放送予定!

衛星劇場では好評企画だった「昭和歌謡映画のアイドルたち」に続き、2019年1月から「僕らの青春70’s〜スクリーンのアイドルたち〜」と題して、70年代に活躍したアイドルが主演した映画を3カ月にわたってオンエアする。

実際“アイドル”という言葉が国内に定着するのは70年代以降と記憶している。それまでは主に映画から派生していく若手“スター”の時代だったのが、TVの台頭によって10代の少年少女を対象とするアイドルが歌番組などで人気を博すようになっていく。『スター誕生』のような芸能オーディション番組も生まれ、そこから森昌子や山口百恵、桜田淳子、ピンクレディー、石野真子などが巣立っていった。『明星』『平凡』などの芸能グラビア雑誌も映画スターからアイドル中心のものへ徐々に舵を切っていく。

一方、松竹は意外にもアイドル映画の宝庫であった。庶民の喜怒哀楽を描き続ける大船調を掲げる同社と、映画スターよりも少しだけファンとの距離が縮まってきたアイドルの庶民性は肌が合ったようで、いわば松竹アイドル映画とは若者向け大船調の具現化だったのだ。

思えば当時のアイドルはTBSの人気ドラマ『時間ですよ』シリーズで天地真理が“となりのマリちゃん”、浅田美代子が“お手伝いのミヨちゃん”として出演し、その手が届きそうで届かない可愛らしさが人気を博していく。『寺内貫太郎一家』では西城秀樹がレギュラー出演し、毎週ド派手な喧嘩シーンを披露していた。

同じくTBSの土曜バラエティ番組『8時だヨ!全員集合』には毎週アイドルがゲスト出演して、ドリフターズとともにコントを繰り広げて、ただ単に美男美女というだけでない気さくなところをアピールしていた。日本テレビ『カックラキン大放送‼』では研ナオコに加えて野口五郎&郷ひろみ。『全員集合』にレギュラー出演していたキャンディーズは『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』でもかなり過激なコントを毎週披露していた。

このように銀幕の憧れのスターから、家庭内のテレビを通して、少しだけ身近になってきたアイドルの庶民性を活かしながら、日本映画不振と呼ばれて久しかった70年代当時に銀幕の魅力を再び取り戻そうと腐心した一例として松竹アイドル映画を捉えてもいいのではないか。

当時その手のジャンルの第一人者であった山根成之監督は、自分のことを「お子様ランチ監督」と自嘲気味に称していたことがあったが、大人たちがお子様ランチを食べるイベントが当たり前の現代において、実は松竹のお子様ランチ=アイドル映画は今の時代に通じる面白さを秘めたユニークなものであったことを、この機会に認識していただけたら幸いである。


今月の書き手

増當竜也(ますとうたつや)
映画文筆
娯楽も芸術も、実写もアニメもエンタメの一ジャンルとみなし、古今東西の映画に接し続ける。現在「キネマ旬報」誌に『戯画日誌』、映画サイト「シネマズplus」に『キネマニア共和国』連載中。2018年11月に『映画監督 佐藤純彌 映画よ憤怒の河を渡れ』を上梓。