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Cinema de 温故知新

庶民的イメージだけじゃない、大女優・倍賞千恵子

 現在、映画『男はつらいよ』シリーズの主人公・寅さんこと車寅次郎の故郷である葛飾区の京成金町線柴又駅前広場には、寅さんの銅像(通称フーテンの寅像)が飾られているが、今年3月、同所に寅さんの妹さくらの等身大の銅像“さくら像”が設置されることになった。これでようやく兄妹が再会できると、地元では大歓迎ムードのようだ。

 衛星劇場でもこれを記念して(!)、さくら役の名優・倍賞千恵子の主演映画特集を組むことを決定。3月は『下町の太陽』『霧の旗』をオンエア。もちろん毎月恒例『男はつらいよ』シリーズからも『奮闘篇』『寅次郎恋歌』をオンエア。また4月は『私たちの結婚』『二十一歳の父』、5月には『海抜0米』『横堀川』が放映予定となっている。

 ここで彼女のキャリアをざっと振り返ってみると1941年6月29日、東京市豊島区の生まれ。5人姉弟の次女(三女は女優の倍賞美津子)。小学校4年生でみすず合唱団に所属し、57年春の中学卒業後、親が勝手に松竹音楽舞踊学校に願書を提出し、それが合格となり、同校を首席で卒業した60年、松竹歌劇団(SKD)に13期生として入団。やがて中村登監督にその才能を見出され、翌61年1月に松竹と専属契約。映画デビュー作は中村監督『斑女』(61)の家出娘役であった。

 この時期、松竹は彼女を下町娘のイメージで売り出す一方、62年には『瀬戸の恋歌』で歌手デビューも果たし、同年の製作者協会新人賞およびレコード大賞新人賞を受賞。また2枚目のレコード『下町の太陽』が大ヒットしたことで、それをモチーフにした青春映画『下町の太陽』(63)に主演。このときの監督が山田洋次であり、これが運命的出会いとなって、続く異色サスペンス映画『霧の旗』(66)主演を経て山田作品の常連となっていく(3月のオンエア2作品はそういった背景を知ってから見ると、また興味深い)。

 そして69年に始まる『男はつらいよ』シリーズ全48作で寅さんの妹さくらを演じ、下町的イメージは完全に定着していくが、本人はその域に留まることなく、

下町の太陽

九州から北海道へ移り住む家族を描いた山田作品『家族』(70)で、その年のキネマ旬報女優賞、毎日映画コンクール女優主演賞を受賞。

 その後も『故郷』(72)『同胞(はらから)』(75)、そして『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』(77)『遥かなる山の呼び声』(80)では高倉健と共演し、特に後者は毎日映画コンクール女優主演賞などを受賞。さらには81年、高倉と三度共演した初の東宝作品『駅/STATION』で短くも濃厚な恋に燃える女を演じ、キネマ旬報主演女優賞や毎日映画コンクール女優主演賞などを受賞した。

 山田洋次監督は倍賞千恵子のことを「無個性という個性のある女優」と評している。つまり強烈な自己主張をするのではなく、まるで空気のように違和感なくその場にいつつ、気がつくと周囲の注目を集めているといった、卓抜した演技力と己自身の資質が大いに必要とされる“個性”を、彼女は銀幕で放ち続けていったのだ。

 近年は『隠し剣鬼の爪』(04)『母べえ』(08)『小さいおうち』(14)と、再び山田作品に出演するようになっているのは嬉しい限り。さくらに代表される飾り気のない庶民的イメージを大事にしつつ、その上で大女優として讃えられて久しい倍賞千恵子が、実は幅広い芸風を持ち併せていることにも今回の特集で気づいていただければ幸いである。