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歌舞伎彩歌

「本家本元「ここは地獄の一丁目!」

「四千両小判梅葉」


江戸時代の牢内の様子をご存知ですか? 高く積まれた畳の上にどっかと座る牢名主。仁王立ちし、初めて入牢する者を「ここは地獄の一丁目で二丁目のねえ所だ」と恫喝する者。「地獄の沙汰も金次第」と、新入りから金目の物を「(つる)を出せ」と言って取り上げる者……。時代劇がお好きな方なら、映画やTVドラマで一度はご覧になったことがある光景が、この「四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)」で繰り広げられます。いわば江戸版“塀の中の懲りない面々”、その本家本元と言えるのがこの作品です。


作者は河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)。「白浪五人男(しらなみごにんおとこ)」や「三人吉三(さんにんきちさ)」などの作者の黙阿弥は、江戸の町人の生活を活写した世話物、とくに盗賊らを主人公にした物語「白浪(しらなみ)もの」で有名ですが、この「四千両小判梅葉」もそうした「白浪もの」の一つです。安政2年(1855年)、実際にあった江戸城内のご金蔵から四千両を盗み出した事件で、やがて捕まって処刑された2人の男をモデルに描かれています。


でもこの作品が上演されたのは、事件から30年後の明治18年(1885年)。実は黙阿弥、明治期になってからも江戸の風俗を芝居に書いて残しているのです。「髪結新三(かみゆいしいんざ)」や「幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)」なども、明治期の作品。維新によって世の中が180度変わり、江戸の匂いがあっという間に失われていくのを惜しんで書いたと言われています。 「四千両小判梅葉」で特徴的なのは、元代言人(弁護士)から資料を手に入れた黙阿弥が、当時の実際の牢内の様子や囚人たちの姿、しきたりなどを舞台上に再現したことです。もしこれが江戸時代に書かれていたら、きっと当局から上演禁止になっていたでしょうが、すでに世の中は明治。徳川幕府への遠慮がなくなり、犯人の富蔵、藤十郎という名前も本名で書かれました。


牢内の様子だけではなく、盗み出した四千両をどうするかの描写もリアル。すぐに山分けするか、それとも足がつかないように当分寝かせておくかで仲間割れしたり、自分がつかまっても家族には害が及ばないように他人を決めこむ姿など、現代の犯罪ドラマにしても違和感のない展開でまったく古さを感じさせません。「初演の五代目(尾上)菊五郎らしい細部までこだわった演出」を後々までも大切につなげていきたいという当代尾上菊五郎が、21世紀の現代に江戸の香りを届けてくれます。