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歌舞伎彩歌

ちょっと幕間「立ち位置からひもとく人物の力関係」

身替座禅 舞台に向かって右を上手(かみて)、向かって左を下手(しもて)と言いますね。舞台上のどこに登場人物が立つか(あるいは座るか)に注意すると、物語における人間たちの力関係や、その変化が見えてきます。これを覚えておくと、初めて観る作品でも理解しやすくなると思いますよ!


現代でも、「お客様は上座(かみざ)にお通しする」という習慣があります。床の間のある和室では、床の間の前が上座。歌舞伎の舞台では上手が上座だと思ってください。 いろいろパターンはありますが、ざっくりと、
A「二重舞台のときは上にいる人のほうが下にいる人より偉い」
B「上手にいる人のほうが下手にいる人より偉い」
そう考えてほぼ間違いはありません。


Aは上下なのでわかりやすいですね。だいたい偉い人はお屋敷の中で、使用人は下。使用人でも家来でも、主人に近い人は上にいることがあります。同じ話を聞くにしても、偉い人は主人と同平面で対等に話を聞きますが、武士と町人など位が違うと、普通は見下ろす形で対峙。訴えを起こした人や囚人など、裁かれる人は下、裁く人は上です。


変化が大きいのはBのほう。最初は家来が下手、主人が上手ですが、そこにお役人や幕府の使いなど、主人より偉いお客さんが来ると、主人は下手にまわってお客さんに上手を譲る形に。けれど、それほど偉くない訪問者だと、主人は上手にとどまり、お客さんでも下手に案内して対応します。「与話情浮名横櫛(よはなさけ うきなのよこぐし)」で、お富のところに蝙蝠安や与三郎がものもらいにやってきても、お富は上手の席から動きませんが、面倒をみてもらっている和泉屋多左衛門が来ると、彼を上手に座らせて、自分は少し下手にずれます。 面白いのは、身をやつしていた人が「正体を現した」とき。『いがみの権太』では、使用人として下手にいた弥助が平維盛(たいらのこれもり)として語り出すと、それまですし屋の主人だから上手にいた弥左衛門は、維盛の忠実な家来として、下手にまわるのです。


身分としての上下関係は変わらなくても、そのときの気持ちの変化が見て取れるのが「身替座禅(みがわりざぜん)」。夫婦や男女の場合は上手に男、下手に女が常で、山蔭右京と妻の玉の井も基本的にはこの位置です。でも右京が玉の井に「おねだり」をしたり、謝ったりするときは、右京が下手に! そんなところに注目し、恐妻家・右京の心理をひもといてみてください。