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歌舞伎彩歌

「笑いとサスペンスで綴る裏長屋の人情」

「権三と助十」


みなさんは町内会や自治会の行事によく参加しますか? お祭りや餅つき大会のほかに、消防訓練や避難訓練、ゴミ集積所の掃除など。10年に一回くらいは役員も回ってきて、面倒に感じることもありますよね。


江戸の昔、共同体は今よりずっと絆の強いものでした。互いに力を合わせなければできないことがたくさんあったからです。その一つが「井戸替え」。家の中で蛇口をひねればいつでも水が出てくる時代ではありません。きれいな水は文字通り生命線。共同で使う井戸の底にたまった泥を、年に一度浚ってきれいにするのが井戸替えで、力仕事ですから人手が要ります。長屋では全員総出で精を出し、終われば家主が酒をふるまって労をねぎらいました。


「全員参加」のはずなのに、ズルして来ない人がいるのも今と同じ。せっかくの休みがつぶれる残念さもわかれば、「自分は参加してるのになんでアイツは?」の悔しさもわかる。「権三と助十」は、そんな井戸替えの風景から始まります。その裏長屋には、駕籠かきや芸人、猿回しなど、お金にあまり縁のない人々が肩を寄せ合って住んでいて、文句を言ったり喧嘩をしたり、でも困った人は助け、些細なことも笑い飛ばして明るく生きている。権三夫婦(中村獅童・中村七之助)と助十(市川染五郎)の掛け合いがリズミカルで、まるで落語でも聞いているように軽妙です。


楽しく笑える前半から一転、後半は権三と助十が殺人犯らしき男・勘太郎(片岡亀蔵)を目撃したことから、サスペンス調に! 証言をすれば、長屋の住人の冤罪をはらせるかも、と家主(坂東彌十郎)の知恵も借りて奉行所へと赴きます。ところが勘太郎は証拠不十分で釈放され。「御礼まいり」にやってきたから大変! 長屋の住人たちは震えあがります。


岡本綺堂が1926年(大正15年)に書いた世話物です。町奉行・大岡越前を主人公とした名裁判話「大岡政談」(フィクション)をもとにしていますが、「お白洲」の場面つまり裁定の場を出さず、江戸庶民の側から事件とその解決を描いた新歌舞伎。疑わしきは罰せず、物的証拠が出るまでは逮捕せず、といったところは、舞台設定の江戸というより大正デモクラシーの20世紀につくられたからこその描き方に感じられます。