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歌舞伎彩歌

『ちょっと幕間「物売り」のいろいろを楽しむ』

団子売 「竹屋〜、竿竹!」と聞こえれば竿竹屋さん、「い〜も〜、い〜し〜焼〜き芋!」で焼き芋屋さん。夕方に「パーフー」と鳴れば豆腐屋さん、同じ笛でも冬の夜のチャルメラならラーメンの屋台…。少し前まで物売りの声は、家の中にいても季節や時間がわかるくらい、日常生活に溶け込んだものでした。


「男はつらいよ」に出てくるフーテンの寅さんのように、香具師による「バナナのたたき売り」などの口上も、縁日でよく目にする風景。今も昔も物売りは、商品以上にパフォーマンスでお客を集めていたんですね。こうした物売りたちの風俗を、歌舞伎は取り込んできました。「物売り物」というジャンルとして、物語の中に入れ込んだり独立したお芝居にしたり、所作事として舞踊仕立てたりしています。


「髪結新三」には「カッツオ、カッツオ!」と威勢よくやってくる初鰹売りが、「東海道四谷怪談」には「藤八(とうはち)、五文、奇妙!」と叫びながら花道から登場する薬売りがいます。薬の名前とキャッチフレーズを叫ぶのは、今のCMと同じですね。


物売りもので一番有名なのは「外郎売(ういろううり)」でしょうか。「外郎」とは痰切り薬の名前です。曽我五郎が父親の敵を討つために、外郎売りに身をやつしているという設定で、外郎売りの長くて複雑な「言い立て」を披露するところが見どころです。「助六」で、兄の曽我十郎は「白酒売り」に身をやつす。物売りと「ヤツシ」(身分を隠して潜伏する、変装する)とは、昔から深い関係にあります。


夫婦二人で物売りをするバージョンもあります。今月放送の「団子売り」も、そうした夫婦による物売り物の一つ。「団子売り」といっても出来上がった団子を並べて売るのではなく、杵と臼とでその場で餅をつき、できたての団子をふるまう、いわば「実演販売」の物売りです。一方で「男の杵と女の臼で(団)子をつくる」つまり、男女の営みから子どもができることを隠喩した、多産と豊穣を寿ぐ縁起物の踊りでもあります。夫婦で仕事に精出して、疲れたらちょっと休憩、おかめとひょっとこのお面をかぶって遊び、仕事が終わったらまた次の街へと流れていく……。どこにでもある日常を切り取っただけなのに、味わい深く感じられるのは、そこに芸と艶があるからですね。