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歌舞伎彩歌

なぜ「織田信長」は「小田春永」に言い換えられたのか?

近江源氏先陣館〜盛綱陣屋 歌舞伎には、平家物語など歴史を扱った物語がたくさんあり、「平清盛」や「源義経」など、知名度の高い武将がよく出てきます。


ところが戦国時代以降の話となると、実在の人物は実名ではなく、名前を変えて登場します。江戸時代は、少しでも権力者(=徳川幕府)を批判したりバカにしたり、徳川が滅ぼした豊臣の人々を称賛するようなお芝居をすると、すぐに上演禁止! 悪くすると戯作者や役者は投獄されました。それで織田信長は「小田春永」、豊臣秀吉は「此下東吉(このしたとうきち)」(=木下藤吉郎)あるいは「真柴久吉(ましばひさよし)」(=羽柴秀吉)など、一部の音や漢字を変え、「フィクションです」と仮名にして上演したのです。


でも、このような安易な語呂合わせだけではすぐに本名がわかってしまいますよね。そこで名前を変えるだけでなく、同じような人間関係を持った昔の話になぞらえる(これを歌舞伎では「世界を借りる」と言います)など、あの手この手で言い逃れができる工夫をしたのです。


たとえば「近江源氏先陣館(おうみげんじ・せんじんやかた)」は、鎌倉時代の佐々木盛綱・高綱兄弟の話という設定ですが、本当に描こうとしているのは大阪夏の陣。主人公の盛綱は真田幸村、高綱は兄の真田信幸です。幸村は豊臣側なので、当然徳川家は敵役! でもそんな筋立ては許されません。「これは鎌倉時代の物語つまり“時代劇”で今(江戸時代)のお話ではありません」「敵は鎌倉幕府の北条時政」ということにしました。観客のほうは「幕府」「東の武将」というキーワードで「ああ、あれが徳川方だな」と察しながら芝居を観たのです。


同じようなことを、現代でもしていませんか? 特定の人物や団体を匂わせながらも「このドラマはフィクションであり、登場する人物や団体は、実在の人物や団体とは一切関係がありません」というエンディングテロップをよく見かけます。特に扱う題材が、発生して間もない事件であったりすれば、制作者は今も昔も気を遣うことでしょう。


歴史が好きな方は、「この人物のモデルは誰か?」を考えながらご覧になると、また違った面白さが湧いてくるのではないでしょうか。