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歌舞伎彩歌

『矢の根』縁起物を並べて楽しむおおらかな祝祭劇

矢の根 「矢の根」は七世市川團十郎が選定した「荒事(あらごと)」の作品群「歌舞伎十八番」の中でも名作と言われる一つです。「荒事」の特徴は、超人的な力をもった主人公がその勇猛ぶりを見せることで、そのビジュアルは使用するかつらや衣装、小道具、化粧なども含め、写実とは対極の誇張した様式美となっています。「矢の根」の主人公・曽我五郎の勇壮な出で立ち(赤い隈取〈筋隈〉・角前髪・黒鬘・仁王襷)も、荒事の代表的なスタイルなのです。


また、歌舞伎では「曽我物」といって、曽我兄弟が富士山の裾野で父の敵討ちをする話にちなんだスピンオフ作品が山ほどあり、「矢の根」もその一つ。弟の曽我五郎はヤンチャで喧嘩っ早く、兄の十郎は分別があるけれど力は弱い。このキャラクターはどの作品にも共通します。


さて曽我兄弟の弟・五郎が矢の根(=矢じり。この「矢」もデフォルメされてものすごく大きい!)を研いでいると、大薩摩主膳太夫が年始の挨拶にやってきます。実はこれ、不思議な光景。観客は、曽我五郎への年始挨拶の場面を観ながら、囃子方(はやしかた=演奏者)が楽屋でスター役者に挨拶をしているところを垣間見るような気分も味わうことができるのです。歌舞伎ならではの重層的な趣向といえましょう。


太夫が持参した宝船の絵を頭の下に敷いてひと眠りすると、兄の十郎が夢に出てきて、仇である工藤佑経の館に捕らわれていることを告げます。兄の一大事!


飛び起きた五郎は、たまたま通りがかった馬士から馬を奪って兄を救いに駆けていきます。この馬も、二人の人間が中に入って操っているとは思えぬリアルさで、ぜひ注目してほしいところ。馬士との愉快なかけあいも、ぜひ楽しんでください。


七福神や初夢の縁起物など、正月にちなんだものをふんだんに取り入れた「矢の根」には、一年の無病息災を願う初詣と共通の華やぎがあります。五郎は「柱巻きの見得」「元禄見得」など、さまざまな形の「見得」を披露。荒事に込められた「強いものに邪気を払ってもらう」という神事に近い精神性が今に生きています。