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こだわり派のあなたに観てほしい逸品を、その道のベテランがご提案する連載コラム。
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今月の書き手:増當竜也
川島雄三監督特集 いよいよ日活時代へ突入!
Vol.7(10月25日更新)
洲崎パラダイス 赤信号
『洲崎パラダイス 赤信号』
監督:川島雄三/原作:芝木好子
脚本:井手俊郎、寺田信義
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子ほか
衛星劇場にて、12月放送予定!

2018年は川島雄三監督の生誕100周年ということで、これを祝して現在さまざまなイベントが催されているが、衛星劇場でも今年の2月から川島監督の全作品放送特集を開始。10月には彼がデビューした松竹で撮った全23作品を一挙放送したばかりだ。

そして11月からはいよいよ彼が日活に移籍しての作品がスタート。まずは移籍第1作『愛のお荷物』(55)『あした来る人』(55)『銀座二十四帖』(55)の3本を皮切りに、日活で撮った全9作品が放送される。

デビュー以降は主に喜劇を連打し、戦後松竹の立て直しに大いに貢献した川島ではあったが、シニカルでナンセンスな視線を盛り込もうとする彼のタッチは、明朗健全なる大船調を抱く老舗映画会社の気風とどこか相容れないものもあったように思われる。

一方、同じく老舗ではあれ、戦後しばらくの間は配給部門のみとなっていた日活が1954年に製作を再開させるというニュースは、当時の若い映画人たちに現状打破する希望をもたらしてくれたようで、その波に川島も乗り、結果としてはもっともアバンギャルドかつハイセンスな意欲作を発表することになった。

仮に松竹時代の川島作品を青春期とみなすとすれば、日活時代は自身のスタイルを確立させていく挑戦期もしくは飛躍期であったと言える。そして57年以降の東京映画(東宝)&大映時代は円熟期と呼ぶことも可能だろう。

川島の日活時代は54年から57年までのおよそ3年と意外に短いのだが、その中で発表された9本を見続けていくと、彼ならではのバイタリズムとニヒリズムの両面に深みが増していき、彼自身が名乗った“日本軽佻派”としての“重喜劇”が確立されていく過程をまざまざと見せつけられることになること必至である。

また川島は当時松竹の助監督だった今村昌平と中平康を伴って日活に移籍しているが、この二人が後に日活黄金時代を支え、ひいては日本映画界の名匠として台頭していくことになる。もし彼らがそのまま松竹に留まっていたら、日本の映画史はどう変わっていただろうか?

実際のところ製作再開させたばかりの日活は五社協定の縛りで他社スターを起用することができず、興行的に苦戦を強いられた。しかし、それゆえに方向性が模索されるとともに新人若手俳優が続々と見出され、やがて石原裕次郎の出現で日活は黄金時代を迎えることになる。

石原をスターダムに押し上げたのは中平康の初長編映画『狂った果実』(56)で、その後で川島は『幕末太陽伝』(57)の坂本龍馬役に石原を起用し、彼の未来を見届けた上で日活を去った。それは「サヨナラだけが人生だ」を地でいくかのような彼の生きざま「積極的な逃避」の顕れでもあったのかもしれない。


今月の書き手

増當竜也(ますとうたつや)
映画文筆
娯楽も芸術も、実写もアニメもエンタメの一ジャンルとみなし、古今東西の映画に接し続ける。現在「キネマ旬報」誌に『戯画日誌』、映画サイト「シネマズby松竹」に『キネマニア共和国』連載中。