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こだわり派のあなたに観てほしい逸品を、その道のベテランがご提案する連載コラム。
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今月の書き手:増當竜也
「為五郎」シリーズをはじめとするハナ肇の映画スターとしての魅力
Vol.4(7月26日更新)
アッと驚く為五郎
『アッと驚く為五郎』
9月に「為五郎」シリーズ5作品を一挙放送!

数々のアナーキーなコントと秀逸なジャズ音楽を融合させたパフォーマンスで戦後の昭和を駆け抜けた“ハナ肇とクレージーキャッツ”。そのリーダー・ハナ肇の映画スターとしての顔に今回はスポットをあててみたい。

1930年生まれのハナ肇が数々のバンド活動を経て“ハナ肇とクレージーキャッツ”を結成したのは57年。その後『シャボン玉ホリデー』などのTVバラエティ番組で人気を博し、60年代に入ると映画にも進出。そのデビュー作は増村保造監督によるシニカル喜劇『足にさわった女』(60)の主人公刑事であった。この時点で彼に俳優としての腕を大いに見込まれていたことが理解できる。

この後、彼は若き日の山田洋次監督とコンビを組んで64年の『馬鹿まるだし』をはじめとする「馬鹿」シリーズや、『運が良けりゃ』(66)『なつかしい風来坊』(67)に主演し、松竹喜劇映画に欠かせない存在となっていく。

そして70年代に入り、彼が主演したのが、瀬川昌治監督の『アッと驚く為五郎』(70)を第1作とする「為五郎」シリーズであった。

このタイトルは、日本テレビの人気番組『巨泉×前武のゲバゲバ90分』の中で、ヒッピーに扮したハナが叫んで流行語にもなった名セリフ「アッと驚くタメゴロー」から採られたものである。

映画そのものは、関東大震災にアッと驚いた母親から生まれ、戦争中のアッと驚く体験の数々を経た結果、今や何事に対しても驚かないガメツい金融会社の社長になって久しい大岩為五郎(ハナ肇)とその周囲の人々の騒動をめぐるコメディ。戦争や原爆の傷跡といった問題意識をさりげなく盛り込み、ヒッピーにバリケードなど当時の社会問題などを巧みに反映させた反骨の喜劇として屹立している。

本作は好評につきシリーズ化され、野村芳太郎に監督をバトンタッチ、主人公も名を坂東為五郎と改めた任侠コメディ『なにがなんでも為五郎』(70)としてお目見え。その後野村監督で『やるぞみておれ為五郎』(71)『花も実もある為五郎』(71)、そして森ア東監督『生まれ変わった為五郎』(72)と、計5作が作られた。

2作目以降もシリーズとしてのドラマのつながりは特になく、要は現代の侠客・坂東為五郎の活躍を描いたもので、いわば『網走番外地』喜劇版を狙ったような感もあるが、ワイルドでリーダーとしてのカリスマ的風格を備え持つハナ肇と為五郎のキャラクターは見事にマッチした。

この後『仁義の墓場』(75)などシリアスな作品にも個性を発揮し、晩年の『会社物語 MEMORIES OF YOU』(88)では枯れた男の味わいを見事に華開かせ、93年に惜しくもこの世を去ったハナ肇。その映画スターとしての魅力も、いつまでも堪能したいものである。


今月の書き手

増當竜也(ますとうたつや)
映画文筆
娯楽も芸術も、実写もアニメもエンタメの一ジャンルとみなし、古今東西の映画に接し続ける。現在「キネマ旬報」誌に『戯画日誌』、映画サイト「シネマズby松竹」に『キネマニア共和国』連載中。