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深煎り時間(タイム)

こだわり派のあなたに観てほしい逸品を、その道のベテランがご提案する連載コラム。
深煎りした珈琲のように、名作の深い味わいをご堪能ください。
今月の書き手:増當竜也
あくまでも孤高を保ちながら「偶像」のオーラを発し続けた昭和のアイドルたち
Vol.3(6月25日更新)
ブロウアップ ヒデキ
『ブロウアップ ヒデキ』
出演:西城秀樹/構成・監督:田中康義
1975年、二十歳の西城秀樹のステージを追ったドキュメンタリー・フィルム。8月はその他に郷ひろみ、野口五郎の出演作も放送予定。

西城秀樹が亡くなった。享年63歳。あまりにも早すぎる死に愕然としつつ、彼の人気を肌で体感してきた世代としては、ひとつの時代が終わったような虚脱感に襲われたりもする。

そもそもアイドルとは「偶像」という意味を持つが、西城秀樹らが活躍していた昭和の時代のアイドルはまさにその言葉こそがふさわしいほどに、どこか遠くから仰ぎ見る存在であった。平成も終わりに近い今のアイドルは自らSNSで発信し、握手会などのイベントで手軽に会えたりもする身近な存在と化して久しいが、昭和のアイドルはおよそ手の届かない遠い場所にいた。あくまでもテレビや映画、ラジオ、雑誌などで接する他なく、それゆえにファンは憧れをいっそう募らせることに繋がっていたようにも思える。

都会はいざ知らず、地方でアイドルのコンサートなどが開催されるときなど、子どもたちだけでなくPTAや町内会など地域を巻き込んでの大騒ぎになるのが常で、学校側からは大概「夜の開催なので親子同伴でいくこと!」みたいな仰々しいお触れが出るものだった。

昭和と今のアイドルの違いを考えるにパッと思いつくのは、今のアイドルが大人数のユニット主体なのに対し、当時は単体が主流。グループでもフォーリーブスの4人やキャンディーズの3人、フィンガー5の5人、ピンクレディーの2人と、せいぜいそのくらいの数だ。

もっとも、芸能マスコミは当時人気のアイドルをどこか一括りに捉えたがる傾向もあり、たとえば1960年代に人気を博した西郷輝彦、舟木一夫、橋幸夫の3人を「御三家」、70年代の西城秀樹、野口五郎、郷ひろみを「新御三家」(ビッグスリーと呼ばれることもあった)、山口百恵、桜田淳子、森昌子を「花の中3トリオ」(年を経るにつれ、学年は変わっていく)などなど。

こういった括りはファン同士の派閥争い(?)をもたらし、「私はゴロー派!」「ヒデキ最高!」みたいな叫びが学校の教室から響き渡るのが日常ではあった。今のAKBグループなどアイドルのユニット体制とは、売り出す最初からそういった括りを意識的に仕掛けることで、メンバー同士の人気競争を促す目論みもあるのかもしれない。

もっとも当時のアイドルは基本的に孤高を保ち、独りでステージに立ってはオーラを放ち続けるだけの実力も覚悟もあった。だから彼ら彼女らが集う歌番組などにも一段と力がみなぎり、“オールスター”という響きにふさわしい貫禄が保たれていたのではないか。今回の西城秀樹の死に打ちひしがれた“元”少年少女の嘆きの数々を目の当たりにしながら、改めてその想いを強くしてしまった。


今月の書き手

増當竜也(ますとうたつや)
映画文筆
娯楽も芸術も、実写もアニメもエンタメの一ジャンルとみなし、古今東西の映画に接し続ける。現在「キネマ旬報」誌に『戯画日誌』、映画サイト「シネマズby松竹」に『キネマニア共和国』連載中。