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深煎り時間(タイム)

こだわり派のあなたに観てほしい逸品を、その道のベテランがご提案する新連載コラム。
深煎りした珈琲のように、名作の深い味わいをご堪能ください。
今月の書き手:仲野マリ
未体験のジャンルにもちょっと寄り道!
Vol.1(4月25日更新)
菅原伝授手習鑑〜寺子屋
5月3日に『菅原伝授手習鑑』を通しで放送!

この夏、世界的にもファンの多い『ナルト』が歌舞伎になる。『ワンピース』に続くマンガコンテンツの歌舞伎化だが、主人公ナルトに忍術をおしえる「児来也」は、もとを正せば江戸時代に生まれたキャラクター。河竹黙阿弥がすでに『児雷也豪傑譚話』という歌舞伎にしている。その後も映画、小説、戦隊ヒーロードラマにまでなっている児雷也は、日本の古典芸能がいかに強烈なキャラクターを生み出し、またそれを核として、いかに様々なストーリーを紡いできたか知ることのできる一例だろう。

衛星劇場では5月3日〜4日、「伝統芸能時間一挙放送」と題して歌舞伎、狂言、落語、講談と古典芸能を連続放送する。これを機会に異なるジャンルの芸能を見比べてみると、意外に「あ、これ知ってる」というコンテンツが多いことに気づくかもしれない。

たとえば講談『扇の的』は、「平家物語」で那須与一が平家の船上に掲げられた扇の的に矢を射る場面を活写する。映画やNHKの大河ドラマで何度も映像化されているが、講談のたたみかける迫力とリズム感に、新たな高揚を感じるに違いない。『牡丹燈籠』は、歌舞伎にもなっている落語。歌舞伎好きなら噺家の話術を聞きながら、好きな役者の顔やしぐさを想像するのも楽しい。またひと口に「落語」といっても、上方落語や江戸落語、古典落語か創作落語かなど、それぞれ味わいは異なる。続けて高座を聴き比べれば、改めて落語の奥深さに気づけるかもしれない。

歌舞伎では、『菅原伝授手習鑑』が今回通し狂言として一挙放送。太宰府天満宮でおなじみの菅原道真が、政敵・藤原時平の計略にかかり追い落とされていくまでを、つぶさに見ることができる。古今東西、権力闘争や政府高官降ろしにまつわる汚いやり方は変わらない。また、正義を貫くために家族を犠牲にできるか、揺らぐ気持ちも同じ。さらに巻き込まれる雇われ人の悲痛な決断は、現代の世相と二重写しになってことさらリアルだ。通しで観ることで、クライマックス『寺子屋』に至るまでのバックグラウンドがよくわかる。主人のため、罪もない他人の子どもを殺そうとまでする男とその妻が呟く「せまじきものは宮仕え」という有名な言葉の持つ重みをかみしめる。

「古典の世界は、現代と設定がかけはなれている」と思いがちだが、テーマや本質が変わらないからこそ何百年も作品が生き続けている。この機会に、ぜひたくさんの古典の名作に触れてもらいたい。


今月の書き手

仲野マリ(なかの・まり)
演劇・映画ライター/講師。
歌舞伎・文楽、現代劇、ミュージカル、バレエと幅広く舞台を観劇、歌舞伎俳優や宝塚トップ、舞踊家、演出家、落語家などのインタビュ ーや劇評を書く。
シネマ歌舞伎上映前解説など講座多数。2017年著書「恋と歌舞伎と女の事情」刊行。