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舞台『東京喰種トーキョー喰種』「食べる」を越える「生きる」はあるのか?

舞台「東京喰種トーキョーグール」

人間の顔をして、人肉を喰らう"喰種(グール)"。普段は社会に紛れて暮らしているが、ときに正体を露わにし、「犠牲者」は跡を絶たない。人々は恐怖し、CCG(喰種対策局)が組織され、東京の喰種殲滅を目指して警戒にあたる。大学生カネキ(小越勇輝)は好意を持った女性リゼ(浜田由梨)が喰種と知って驚く。カネキに用意された未来は残酷なものだった――


2.5次元舞台/ミュージカルの大きな魅力は、漫画やアニメの世界を忠実に舞台で再現してくれることだ。でもこれほどグロテスクな状況や造形を、生の舞台で再現できるのか? そんな懸念を吹き飛ばす舞台展開が見事! 観客の想像力をフルに生かしつつ、「人肉喰」のおぞましさから目を背けることのない演出に感服する。登場するキャラクターは、漫画から飛び出したかのようにそっくりの上、それぞれ魅力的。なかでもニシキ(鈴木勝吾)とウタ(村田充)は、役づくりに陰影があり、セリフ以上の人生を観客に見せてくれる。


人が人を喰らうというタブー中のタブーを描くにあたり、「喰種は人間が普通に食べる物を体が受け付けない」という設定がある。あり余る食材を目の前にしての飢餓感は、飽食の現代に重度の食物アレルギーなどで食餌制限を余儀なくされた人々の、苦しみに似ていないだろうか。喰種であるトーカ(田畑亜弥)が「みんなおいしそうに食べているけど、どんな味がするの?」というセリフは、「普通に食べたい」と思うせつなさに溢れている。


人間であり喰種にもなってしまったカネキは、何も食べられず、自らの「居場所」を求めてさまよう。この飢餓感にどう立ち向かうのか。自分が生きるため、目の前の親友の命も犠牲にできるのか。これまで大事にしてきたことを投げ捨ててまで、自分だけ生き伸びたいか。これらは戦乱やホロコーストにおける究極の選択にも通じる。善か悪か、勝者か敗者か、生か死か。二者択一しか許さない残酷な社会を注視しつつ、「それでも生きていく」ために必要な本当の知恵と勇気を紡ぎ出す。本能と倫理のせめぎ合いを真正面から描いた骨太の作品。単なるダーク・ファンタジー・バトルでは片づけられない秀作である。