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Close Up & Spotlight

2013年3月にパルコ劇場で上演され、大好評となった『趣味の部屋』の2015年上演版。PARCO Presents「趣味の部屋(2015年公演)」

「趣味の部屋」

「少ない人数で、決められた場所だけで、お客さんが最後にあっと驚くような仕掛けのあるものを」―そう中井貴一に依頼されて古沢良太が脚本を書き、行定勲が演出を手がけた「趣味の部屋」。男たちが心おきなく自分の趣味に没頭できる空間を確保するために借りたマンションの一室を舞台に、「趣味を愛す」だけでつながる人間関係の愛しさと危うさを描き出している。


「趣味でつながる」といっても、料理、古書収集、ガンダムなど、それぞれ趣味が異なるというシチュエーションが面白い。仲間とはいえ、自分の趣味ほどに他人のそれはリスペクトできないところは私たちにも覚えがある“あるある”で、思わず笑ってしまう。 そんなコメディタッチの導入から一転、もう一人の仲間・木下が行方不明になったと婦人警官・宮地(原幹恵)が乗り込んできたところから、話は俄然ミステリーの様相を呈するようになる。以降、仲間同士が疑心暗鬼となり罵り合う豹変ぶりは、人間の表の顔・裏の顔を見せて背筋が寒くなる思いだ。いったい誰が嘘をつき、何が真実なのか。


川平慈英が、江戸川乱歩を愛する水沢の偏執的狂気を目元口元にのぞかせる。白井晃はガンダムワールドのうんちくをたれる金田のオタクぶりが見事。そして圧巻は、やはり中井貴一だ。人をまとめる度量を持った穏やかな物腰、にこやかな話しぶり。だが目が笑っていない。そしてなぜ冷凍庫に大きな錠前? そこに気づいたとき、私たちはもう、舞台上のすべてから一秒たりとも目が離せなくなっている。


脚本に隙がないのである。どんでん返しが寄せては返す波のように何度もやってくる。「だからあのとき、あの服装なのか!」と膝を打つほどの周到な伏線の張り方には脱帽するしかない。趣味を見つけるためにいろいろ試しては挫折する若者・土井(戸次重幸)の設定も、最後の最後に効いてくる。


西洋演劇にはかつて「三一致の法則」という縛りがあった。場所も動かず、時も飛躍せず24時間以内、筋も一つだけ。「3年前―」とか「そのころA子の家では―」などといった舞台転換はご法度だ。窮屈この上ないが、その窮屈さが一場完結の演劇を進化させたともいえよう。「趣味の部屋」は一つの場所に無理なく5人が登場し、上演時間と同じだけの時間が流れるうちに一つの問題が解決する。鍛え抜かれたウェルメイド作品である。